もくわく産地だより:神奈川 / 木や森のこと

水でつながる海と森 @神奈川県相模原市 VOL.2

2023.07.14(Fri)

6月から「津久井杉のもくわく」の製造を担当している、森侖舎の渡邉です。

東日本の産地で初、神奈川県のもくわくですが、神奈川といえば大都市の横浜、川崎、そして古都鎌倉、さらに湘南の海! サザンオールスターズ! というイメージではないでしょうか。

 

と、前回と同じ書き出しで、「あれ?」と思われた方、引き続きお読みいただきありがとうございます。

 

 

神奈川県相模原市にある津久井地区、そこを流れる相模川、道志川について、一つ前のブログで、説明しました。

今回は、その川、森と海のお話です。

■水運から飲料水、エネルギーへ

富士山を源流にもつ相模川に、道志山塊や丹沢北面を水源とする道志川、さらに丹沢山地を水源にする中津川などたくさんの川が合流して、湘南で相模湾に流れ込みます。

(相模川は山梨県では桂川、神奈川県に入る津久井で相模川へと名前が変わります)

 

 

昭和の初めの頃までは相模川と道志川を使って、伐採した木を筏にして下流に流し、相模湾から東京湾に船で運び、薪や炭も同じように川の水運を利用して運搬していたそうです。

<神奈川県立歴史博物館のサイトより>

 

江戸の町の木材とエネルギーを津久井の森が供給していたんですね。

現代では相模川の水運を利用する物流は途絶えてしまいましたが、飲料水、農業・工業用水の供給、さらには水力発電によりエネルギーを生み出して、下流に水とエネルギーを供給する役割を担っています。

ちなみに相模川水系は神奈川県の上水道の60%もの水を供給しています。

次の地図のように横浜、鎌倉、藤沢、茅ヶ崎、平塚などにお住まいの皆様が今日飲んだ水は、津久井の森からも生まれているんです!

津久井地区の森林は水源林としての役割も大きいのです。

 

神奈川県ホームページ「神奈川の水源と水利用」から引用
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/vh6/cnt/f8018/1015.html

 

■湘南の海と津久井の森は水でつながっている

湘南の海に流れ込む相模川<国交省のサイトより>

 

私たちの日常生活では川は水とエネルギーの供給源に見えますが、自然界全体からみると、それはごく一部の機能にすぎません。

 

 

「森は海の恋人」

これは宮城県気仙沼で30年以上に渡り、山に木を植える活動を続ける牡蠣養殖を営まれている畠山重篤さんが唱えた標語です。

とても素敵な言葉ですね。

詳しくは著書をはじめNPO法人 森は海の恋人(https://mori-umi.org/)の活動をご覧いただきたいとおもいます。

森で生まれる栄養分(栄養塩)が川を下り、海の生き物の成長にとても重要な役割を果たしているそうです。

さらに川を介した森と海の関係は栄養分の供給ばかりではなく、土砂を供給し、河口での対流を生み、水を介して森と海は繋がっていて大きな循環を作っている。

この循環で調整機能が働くことによって、全体のバランスが保たれている。

だから森が荒れると海の生き物にも影響がある、そして人間の生活にも。

定置網漁が有名な湘南の海、この海の恵みは上流の津久井の森と、深い関係があるんですね。

湘南の生しらす、美味しいです!

 

「森は海の恋人」の世界を科学する新たな統合学問領域科学的な解明を目指した京都大学フィールド科学教育研究センターのホームページ (https://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/) には、

森里海連環学の解説(https://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/cohho_study)が掲載されています。

読み応えのある量ですが、科学的に森と海の関係が解説されていて、とても参考になります。

 

■もくわく ができること

もくわく で使われる木材の量は極々わずかで「もくわくで森を守る!」なんて言うことはおこがましいです。

でも、地産地消、どこの森で育った木を使っているかがわかる もくわく を通じて

「今、上流の森や山ってこうなってるんだ」

 

と、関心をもっていただければ。

そして

「そうだ、森に行ってみよう」

 

とちょっと出かけていただければと思います。

さらに今、何が必要なのかを一緒に考えていただければ、作り手としてとても嬉しいです。

 

津久井杉のもくわくは、森侖舎でお受け取りいただくこともできます!

ぜひ、ドライブがてらお越しください。