もくわく産地だより:奈良 / 木や森のこと
「吉野百年黒杉」プロジェクト
2023.04.26(Wed)
吉野杉の特徴として、よく挙げられるのが
「年輪が詰まっている」
「節が少ない」
「色艶が良い」
という3点です。
確かに、吉野杉の多くは「年輪が詰まっていて」「節が少ない」のですが、
「色艶」に関しては、育ってきた環境(標高、方角、土壌など)によって、様々です。
赤味の色合いが淡く、桜色とも言えるような杉が吉野杉の代名詞のように言われていますが、
それと同じくらいの量で、赤味の色合いが濃かったり、黒かったりする杉もあります。
材木屋さん的観点(思い込み)では、それらは色の悪い杉で、評価の低い木材とされていました。
杉の場合は、伐採してみないと、その赤味の色合いは判別できない事もあり、
伐ってみて色が良くなかったら、とリスクがあるため、伐採を控えることもあり、
杉の間伐の遅れは山の循環にも悪影響を及ぼしています。
しかし昔から、木材関係者の間では、色の黒い杉は水に強いから、外部に使うと良い、と言われており、
黒い杉の特徴を活かした販路拡大が出来れば、杉の間伐が進み、持続可能な山の循環に繋がるのではないか、との想いで、
「吉野百年黒杉」
のプロジェクトがスタートしました。
4年前から上吉野木材協同組合(原木市場)と吉野製材工業協同組合(製材所)が連携して、
奈良県森林技術センターとの共同研究を行ってきました。
その結果、樹齢100年以上の赤味の濃い(黒い)杉は、桧と同等の性能があり、
「腐りにくく、シロアリに強く、カビが生えにくい」
という特性を有する事が証明されました。
※上吉野木材協同組合「吉野百年黒杉」紹介ページ
https://kamiyoshino.com/yoshinozai/hyakunenkurosugi-about/
上吉野木材協同組合の新しい休憩棟を建設の際は、外壁板を中心に「吉野百年黒杉」を使用しており、見学もしてもらっています。
また、イベントでの展示も重ねていますが、一般の方々や、デザインや建築の関係者さんからは、
水に強いという特徴よりも、まず見た目の色合いが面白い、綺麗だ!
という感想も多くいただいて、ここにも需要拡大のヒントがあるように思います。
吉野百年黒杉が相応の評価と需要を得て、原木価格も安定すれば、杉の伐採リスクが軽減され、山の良い循環に繋がっていきます。
チャレンジは続いていきます!
吉野中央木材・石橋輝一