もくわく産地だより:神奈川 / 木や森のこと

津久井杉 もくわく の作り方

2024.03.05(Tue)

津久井杉 もくわく を作っている 木工アトリエ 森侖舎の渡邉です。
今回は特別に津久井スギ もくわく の作り方を公開します!

◾️杉の原木を買います

ここは神奈川県相模原市緑区佐野川にある山土場。
「ここからの山の眺めがすごくいいんですよ」と丸太の検寸(売買などに必要な丸太の寸法の確認)をしながら話してくれたのは、杉本林業の日賀野さん。

日賀野さんは若いメンバーが集まる杉本林業の現場のリーダーです。

佐野川は山梨県と神奈川県の堺にあり、北の尾根を超えれば東京。

杉本林業は佐野川地区を中心に森林管理や整備を行い、神奈川県内はもちろん山梨、東京、埼玉まで森や木のことで困っている人を助けに行く会社です。

山土場は伐採された木を仕分けするための土場。

山積みになった丸太の中から今回、もくわくの材となる丸太を選びました。

◾️丸太を板にします

丸太を板にするのは相模原市緑区青野原にある尾崎製材所。

製材所四代目となる尾崎さんが1人でやっていらっしゃる小さな製材所です。

杉本林業さんに運んでもらったスギ丸太が載っているのは製材台車。

製材台車に載った丸太が、鋸を通過して板になります。

樹が材になる瞬間です。

樹は丸く見えますが正円ではありません。

さらに丸太の中心も樹が育った場所によっては真ん中にあるわけではないのです。

その樹のどこから鋸を入れて挽いたら最も良い板が取れるか。

これを外観で判断をしてしまうのが製材さんのすごいところ。

 

丸太から板を挽いていくと、切断した場所によって板表面の模様が違ってきます。

筍が重なったような模様(板目と呼びます)やストライプ模様(柾目と呼びます)になったり、その中間だったり。

鋸の入れ方によって板の模様も板の性質も大きく違ってくるので、製材は奥が深〜い仕事です。

◾️板を乾燥させます

板に挽き終えたら、乾燥させます。乾燥は緑区青山にある(一社)さがみ湖 森・モノづくり研究所の土場で行いました。

樹は生きている時にはその重量の半分以上の水分を含んでいます。

未乾燥の木から水分を抜く乾燥の工程を経て板は強度が上がり、腐敗の心配もなくなり、性質も安定して変形しにくくなります。

今回の材は天然乾燥という屋外に積み上げて乾燥させる方法にしました。

天然乾燥の材は色や香りが良いと言われます。

ただ自然任せなので乾燥が終わるまでに時間がかかり、今回は4ヶ月ほどかけてゆっくりと乾燥させました。

木材の乾燥では、乾燥装置を使って高温の状態を作り、数週間で乾燥させてしまう方法もありますが、それでは色や香りが失われてします事が多いのです。

家具としてお客さまが手に取る もくわく では色や香りも大切にしたいので手間と時間はかかりますが、天然乾燥にしました。

最後に除湿乾燥装置に2週間ほど入れて表面をパリッとさせたら乾燥終了です。

さあ約半年かけて もくわく にする板ができました。

あれ? まだまだ もくわく はできませんね。続きはまた今度。

写真を見て、木材業界に詳しい方は「あれ?」っと思った方がいらっしゃるのではないでしょうか。

実はこの半年の出来事に林業や木材産業を取り巻く課題がいっぱい詰まっているのですが、そのお話もまたの機会に!