もくわく産地だより:福岡 / 木や森のこと
林業遺産「矢部村における木馬道と木場作林業」@福岡県八女市
2023.09.15(Fri)
福岡県八女からのブログです!
林業遺産とは?
皆さんは林業遺産という言葉をご存じでしょうか?
日本森林学会が学会100周年!を記念して日本各地の林業発展の歴史を将来にわたって記憶・記録していくための試みとして2013年度から開始しているもので、2022年度までで50か所が選ばれています。
https://www.forestry.jp/forestryheritage/page/3/
↑50箇所それぞれの地図や資料(選定理由)が閲覧できます。
福岡県八女市矢部村「矢部村における木馬道と木場作林業」が選定
2017年度に24番目の林業遺産として「矢部村における木馬道(きんまみち)と木場作(こばさく)林業」が選定されています。
資料はこちら↓
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/attach/pdf/3108-3.pdf
木馬道(きんまみち)とは
木馬道とは、日本の林業において、かつて用いられていた木材搬出路のこと。
1960年以前の日本。木材の搬出作業は、木馬というソリを使い、牛や馬だけでなく、人力でも行われていたようです。
工業化の進展によって、森林鉄道や林道が整備されるようになり、徐々になくなっていきました。
木場作(こばさく)とは
木場作というのは江戸時代、柳川藩の御用林として禁伐になっていた矢部村の林内で、杉などを疎植した隙間で陸稲や粟などの畑作を両立させていたものです。
山深く平地が少ないことから食糧生産が困難な中で林業と農業を融合させたもので、林業目線でいうと下草刈りが不要になり、農業目線では畑の面積を増やせるというメリットがありました。
これは、禁伐となっていた林内でも、畑作に関しては禁止されていなかったことから生まれた地域ならではの林業です。
木場作では杉の中でも成長の早い品種が多く植えられましたが、成長が早いという事は年輪幅が広く、防腐加工に適しているという事で明治時代に入ると電柱や軍艦の甲板として重宝されました。
関東大震災後の復興需要から木材価格が高騰すると、食糧生産との両立よりも林業を優先するようになり、晩成型の杉が密植された時期もありましたが、戦中は疎開者の受け入れにより再び食糧生産との両立が求められ、木場作が盛んに行われました。
しかし、1950年代に入ると食糧事情も改善され、戦後復興のための旺盛な木材需要に応える形で早生品種による木場作は姿を消しました。
そんな
矢部村の「木馬道」と「木場作」についての道具・写真が、同村「杣のふるさと文化館」に集められ、展示!
されているそうです。
現代の八女の林業と八女杉の特徴
今では矢部村でも日本全国で見られるような密植型の林業
が行われています。
既に遺構となってしまった、かつての「木場作」で育てられた杉は年輪幅が広くて柔らかいため、昔からの大工さんからは「八女杉は柔らかいもんね」とよく言われます。
しかし、今では建築材として密植された杉が伐期を迎えていて、原木市場に出荷されてくる丸太はむしろ堅いものが多いように思います。
※※密植された森林の木材は、間伐などの手間が増え、成長に時間がかかりますが、年輪の幅が狭く、堅く詰まって建材などに向いていることから、日本の林業では、密植が増えていきました。
もくわくに使われている八女杉は比重が高く、硬くどっしりとしている
ので他の産地のもくわくと組み合わせる際はぜひ持ち比べてみてください。同じ杉でも産地によって色味や重さが違いますので、その違いも楽しんでいただければと思います。
そして、なんと・・・前述の
「杣のふるさと文化館」では八女杉のもくわくを使った展示スペースが近日中に公開
されます。
ぜひ、一度矢部村にも足を運んでみてくださいね。
杣のふるさと文化館
所在地:福岡県八女市矢部村北矢部11060-1
定休日:水曜日